風は地球を巡り

 風が強い。冬場の雲の無い空と強い風のコンビネーションは、初めて経験した19歳の私にとって異質すぎた。来る日も来る日も続く晴天。弱っている日は暗い色の雲が見たくて気が狂いそうだった。東海道の冬。今はもう慣れた太平洋側の冬。

 風の音は似ているかもしれない。今日もかつての遠い日も。
 夕刻の空の色は、しかし、今の地球を映し出す。寒空に吹きすさぶ風の音を聞く度に、エルチチョンの灰で鮮やかな赤紫だった1982年の夕空思い出すが、あの泣きたくなるほどの赤紫はあの冬だけのものだった。

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