変わる変わらない

 文字を書かなくなった。ペンを持つ機会が減った。そうすると字が下手になった。昔は毎日沢山の文字を書いていたから,文字を書かなくなったら字が下手になるなんて知らなかった。そうなのか。下手になるんだ。発見したような気がした。

 文字を書く習慣すら変わるとは思いもしないことだったが,こうして思いもしない変化をたくさん遂げてきた。20歳の私が今の私を見たら驚き絶望するだろうと確信できるほど自分自身も変化した。むかし大切だった習慣も信条もどうでもよくなった。

 過去があまりに遠くなると,まるで他人事のように思い出や記憶も遠のいてゆく。
 過去の自分と今の自分のギャップがあまりに大きすぎると,昔の人間関係や思い出は心を支える柱ではなくなってゆく。それどころか足枷になってゆく。

 人生の残りもだいぶ少なくなってしまった。
 既にいらなくなった習慣も思い出も捨てていこうと思う。身軽になって変化していこう。
 人は簡単に変わらない。だけど確実に変わってゆく。