路地の向こうに

 いつもいつも路地裏を覗きながら歩いてしまうのは、
 たぶん見え隠れする人々のいとなみが恋しいからだと思う。
 ふとしたはずみに、街角の隅に見えないだろうか。
 遠く去ってしまった時代や、
 二度と会えなくなった懐かしい人と過ごした記憶の面影が。
 
 年をとるのがイヤなのは、自分が老いるからじゃない。
 会えない人がどんどん増えていってしまうから。
 もういやだ、もうこれ以上のさよならには耐えられない。
 どんなに切実に願おうとも時は過ぎ人は去り容赦ない。
 時に自分を支えるのも困難で、だから幻想の中に懐かしさの欠片を捜す。

 そうして今日も明日も、路地裏を撮る。

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