ひねくれているのもつまらないものだ

 あまりにも世の中が金環金環金環とうるさいもので、正直いってうんざりしていた。長年天文を趣味にしてきてコロナを追いかけて海外遠征もしてきた身の上なのでその貴重さは十分に承知しているのだが、兎にも角にもひねくれ者なもので、どうでもいいよという気になっていた。
 しかも、私がかつて日食を追いかけ回していたことを知っている友人などに当然準備万端でむちゃくちゃ楽しみにしていると決めつけられたメールをもらったりすると、金環日食なんて形が珍しい部分日食にすぎないのにと、更に歪んだ気持ちに拍車がかかってしまった。
 あぁもう早く終わって世の中静かにならないかな。

 ただでさえやる気ないのに、朝から晴れるでもなく雨が降るでもなく、見えるか見えないかわからない絶妙なる空模様。何で見えるか見えないか分からないのに、しかもコロナやダイヤモンド・リングが見えるわけでもない天文現象なのにイレギュラーな行動をとらねばならないのだ、めんどくさい。もう文句タラタラ。そのくせ見える可能性があるのに放棄するほどの勇気も無い。

 分厚い雲がでていたものの、たまに薄くなり、5分弱という凄く長い金環だったのでそういう瞬間を幾つか捉えることができた。
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 …確かに捉えることはできたのだけど、この黒画用紙に輪ゴムを置いた写真と少しも区別がつかない金環日食の写真って、実に面白くないと思う。ハイ写りましたってだけで。
 下の写真の方がぱっくり食べられているみたいで愛嬌があって可愛いと思う。

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 で、結局撮るんだから世間の皆さまと一緒に楽しめば良いのにね。
 金環の10分くらい前になるとかなり暗くなったが、あれは懐かしい暗さだった。普通の夕暮れとはどこか違う日食独特の暗さ。かつて遠征先で興奮しながら味わったのと同じ暗さだった。日食そのものよりもずっと、私はあの独特な暗さに興奮してきた気がする。