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時の流れは優しいだろうか。辛い一面ばかり見る一年だった。
そんなことを言っても仕方がないのだ。
全ては時の流れにさらされ風化してゆく存在。
だけど私は悟ることもできず、いつもいつも、
ただひたすら時の流れを怨み、ただただ苦しみに耐えている。
かつて輝くように大切だった何かは今になって台無しにされ、
あるいは惨めに哀しく衰えてゆく。
胸を突き刺され息もできず喘いでいるのに、
何が何でも見据えて受け入れろ、こんなの序の口なんだよと、
時は淡々と宣告する。そうだよわかっている。
澱まず流れ去る時の旅は後半になるほど辛くなるだろう。
耐えられそうにないからもうここいらで退散させてくださいと
誰に願っても叶えられぬ空しき願いを心に描き、
行き場のないやるせなさに対抗する手段を探し、
結局はただそっぽを向いて、ため息をつく。
何もかも奪われたら、いつかこの世に未練もなくなるだろう。



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金木犀も香らないこの街で

金木犀も香らないこの街で
わたしはひたすら彷徨い歩く。
記憶の中の過去の日を。
記憶の中の青い空を。
記憶の中の冷たい空気を。
 
金木犀も香らないこの街で
わたしはひたすら心を閉ざす。
記憶が零れないように。
記憶が色褪せないように。
記憶に埋もれて心が崩れないように。
 
金木犀も香らないこの街で
わたしはひたすら待っている。
いつか帰れる日を。
いつかどこかへ帰れる日を。
いつか帰りたいと思わない日を。
 
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時は幻の風

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失ったものは失ったもの。
泣いても嘆いても戻らぬことなど明白なのに、何故悲しむのか。
何故涙は諦めぬ。何故物理的には健康な筈の胸が痛む。
何故身体は本人の事情を無視して全力で辛さを支援する。
全ては気持ちの持ちようだから黙って淡々と乗り越えるがよかろう。
その頭脳の結論に何故心は従わぬ。